プロジェクトを成功に導くためには、予算の管理が欠かせません。PMBOK(プロジェクトマネジメント知識体系ガイド)では「コストマネジメント」という知識エリアが定義されており、予算の見積もり・策定・コントロールを行うプロセスが体系的にまとめられています。
今回は、PMBOK第6版・第7版の視点を交えて、「コストマネジメント」についてわかりやすく解説します。
コストマネジメントとは?
コストマネジメントとは、プロジェクトに必要な資金を計画し、実際の支出と比較しながら適切に管理するプロセスです。PMBOK第6版では、以下の4つのプロセスから構成されています。
プロセス | 主な内容 |
---|---|
1. コストマネジメントの計画 | コストの見積り、予算策定、管理方法の方針を決定する。 |
2. コストの見積り | 各作業に必要な費用を見積もる。三点見積りや類似見積りを活用。 |
3. 予算の設定 | 各作業の見積りを集約してプロジェクト全体の予算(コストベースライン)を策定。 |
4. コストのコントロール | 実績と計画を比較し、乖離があれば是正措置を講じる。EVM(アーンド・バリュー・マネジメント)を使用する。 |
コストマネジメントの要点
1. コストの見積り方法
見積りには以下のような方法があります。
- 類推見積り(アナロジー見積り):過去類似プロジェクトの実績に基づく。
- パラメトリック見積り:単価 × 数量 のような数式ベース。
- ボトムアップ見積り:WBS単位で詳細に積み上げる方法。
- 三点見積り:楽観・悲観・最可能の3値から期待値を計算。
それぞれの手法にはコスト・精度のトレードオフがあります。
2. アーンド・バリュー・マネジメント(EVM)
進捗とコストの両面を評価できる強力な手法です。以下の指標が代表的です。
- PV(計画価値):予定していた作業の予算。
- EV(出来高):実際に完了した作業の予算。
- AC(実コスト):完了作業に実際かかったコスト。
- CPI(コスト効率指標) = EV / AC
- SPI(スケジュール効率指標) = EV / PV
たとえばCPI < 1なら「予算超過」と読み取れます。
第7版ではどうなった?
PMBOK第7版ではプロセスベースではなく、原則ベースに移行しています。コストマネジメントも1つのプロセス群として明示的に分かれていませんが、「価値実現」「パフォーマンス領域」の中に吸収されています。
つまり、本質的な目的(コスト管理の重要性)は変わっていないが、柔軟なアプローチが求められるようになったのです。
実務でのポイント
- 実務では「見積り精度」と「説明責任(アカウンタビリティ)」が重要。
- 見積りは複数パターン用意し、リスクに応じて予備費を設定。
- EVMは定期的にモニタリングし、必要に応じて予算再配分することも。
試験対策のポイント(PMP・PM試験)
- 見積り手法やEVM指標の計算問題は頻出。
- 成績指標(CPI、SPI)と意味を正しく覚える。
- 予備費・管理予備などの用語も理解しておく。
まとめ
コストマネジメントは、プロジェクトの持続可能性や成功率を左右する重要な要素です。資格試験対策はもちろん、実務でもこの知識が役立つ場面は多々あります。