プロジェクトの成功を決めるのは、スケジュールやコスト管理だけではありません。むしろ“人間関係”の方が重要です。
PMBOK(第6版および第7版)では、ステークホルダーマネジメントが独立した知識エリアとして扱われています。この記事では、ステークホルダーマネジメントの概要から、具体的なプロセスや実践ポイントまで解説します。
ステークホルダーとは?
プロジェクトに利害関係を持つすべての人・組織のことです。例えば:
- 顧客・クライアント
- プロジェクトスポンサー(出資者)
- プロジェクトチーム
- 社内の他部門(営業、法務など)
- 外注先やベンダー
- 地域住民、政府機関(大規模な公共プロジェクトなど)
一人ひとりの影響力や関心度合いは異なります。それを的確に把握し、適切に対応していくのがマネジメントの要です。
ステークホルダーマネジメントの目的
- ステークホルダーの期待値を調整し、摩擦を回避する
- 意思決定に協力を得る
- 潜在的なリスク(反対・不満など)を事前に察知する
- プロジェクトに対する支持を高める
つまり、関係者全体を“味方”にすることが目的です。
4つのプロセス(PMBOK第6版準拠)
PMBOK第6版では、次の4つのプロセスに分類されています。
プロセス名 | フェーズ | 主な目的 |
---|---|---|
ステークホルダーの特定 | 立上げ | 誰が関係者かをリストアップ |
ステークホルダー・エンゲージメント計画 | 計画 | どう巻き込むか戦略を立てる |
ステークホルダー・エンゲージメントのマネジメント | 実行 | 関係構築、調整、コミュニケーション |
ステークホルダー・エンゲージメントの監視 | 監視・コントロール | 関係の維持、対応の見直し |
この中でも、**「ステークホルダーをどう分類するか」**が初期段階で重要になります。
ステークホルダー分析のフレームワーク
代表的なものに「パワー・関心マトリクス(Power/Interest Grid)」があります。
関心が高い | 関心が低い | |
---|---|---|
権限が高い | 主導的に関与(重点対応) | 報告レベルで対応(監視) |
権限が低い | 協力的に巻き込む | 必要時のみ対応 |
このように、影響力と関心度を軸に分類し、個別対応策を立てるのがポイントです。
実務で役立つポイント
- 初期段階で必ずヒアリング
関係者の期待や不安を聞き取ることで、後のリスクを回避できます。 - コミュニケーション計画と連携
誰に、何を、どのタイミングで伝えるかを明確に。 - 定期的な温度チェック
期待のズレがないか、関係が悪化していないかを定期的に確認しましょう。 - ドキュメント化して共有
属人化を防ぎ、チーム全体で一貫した対応ができます。
まとめ
ステークホルダーマネジメントは「人間関係の戦略設計」とも言えます。いくら完璧な計画を立てても、関係者の支持を得られなければプロジェクトは進みません。
PMBOKが伝えたいのは、「プロジェクトは“人”で動く」という原則です。ぜひ、あなたの現場にもこの考えを取り入れてみてください。