プロジェクトを円滑に進める上で、技術力や計画力だけでは不十分です。
最も重要なのは「人と人とのコミュニケーション」。
本記事では、PMBOKガイド第6版・第7版の考え方を踏まえながら、コミュニケーション・マネジメントについて分かりやすく解説します。
コミュニケーション・マネジメントとは?
プロジェクトに関わる全てのステークホルダーと、必要な情報を、必要なタイミングで、適切な手段で伝達することを管理するプロセス群です。
言い換えれば、
「情報の伝達と理解をコントロールする仕組み」です。
なぜ重要なのか?
PMBOKによれば、プロジェクトマネージャーの仕事のうち90%はコミュニケーションに関係すると言われています。
たとえば、以下のような課題に直面した経験はありませんか?
- 顧客の要望が正しく伝わっておらず、成果物がやり直しに…
- メンバー間で認識がずれていて、スケジュールが遅延…
- 経営層への報告タイミングを誤り、信頼を損なった…
これらの多くは「コミュニケーション不足」が原因です。
コミュニケーション・マネジメントのプロセス(PMBOK第6版)
- コミュニケーション・マネジメント計画の作成(Plan Communications Management)
→ 誰に、何を、いつ、どのように伝えるかを設計します。
→ 例:週次報告、日報、会議体、チャットルールの整備など - コミュニケーションの管理(Manage Communications)
→ 実際の情報発信・収集・配信・保管を実行します。
→ 例:議事録の共有、ステータス報告、ドキュメント配布など - コミュニケーションの監視(Monitor Communications)
→ 計画どおりに情報が伝わっているか、課題がないかをチェックします。
→ 例:関係者の理解度チェック、ヒアリング、フィードバック対応など
コミュニケーション手段の選び方
PMBOKでは「リッチネス(情報の豊かさ)」という概念も重要です。
手段 | 特徴 | 適した用途 |
---|---|---|
対面 | 表情・声・反応が伝わる | 誤解を避けたい場面、重要な報告 |
電話/オンライン会議 | 即時性が高い | 緊急時、議論を深めたいとき |
メール/チャット | 記録が残る、非同期 | 通知、報告、タスク連携 |
ドキュメント | 正確な情報共有、読み返し可能 | 仕様共有、手順書など |
目的と受け手に応じて最適な手段を選ぶことが重要です。
PMBOK第7版ではどう変わった?
第7版では「プロセス重視」から「原則重視」にシフトしました。
コミュニケーションに関しては以下の原則が重要とされています:
- ステークホルダーと頻繁かつ双方向な対話を行う
- 信頼を構築する情報共有を心がける
- 文化・背景の違いを尊重する
つまり「単に情報を伝えるだけでなく、伝わるように配慮すること」が求められます。
実務で活かすためのポイント
- コミュニケーションマトリクスを作ろう
→ 誰に、どの手段で、どの頻度で連絡するかを表にまとめる。 - 聞く力を磨く
→ 一方的に話すのではなく、「理解しようとする姿勢」が信頼を生む。 - 言語・文化の壁に注意
→ グローバルプロジェクトでは「前提の違い」に特に気をつける。
まとめ
コミュニケーション・マネジメントは、すべての知識エリアの土台です。
情報が正しく伝わり、認識が一致しているからこそ、プロジェクトは前に進みます。
小さなすれ違いが大きなリスクにつながる前に、意図的で計画的なコミュニケーション設計を心がけましょう。