プロジェクトを円滑に進める上で、「スケジュールの管理」は極めて重要です。
納期に間に合わなかったり、遅延によるコスト増加が発生したりすることは、プロジェクトの信頼性や価値を損なう原因になります。
この記事では、プロジェクトマネジメントの国際標準である**PMBOK(Project Management Body of Knowledge)**の枠組みに沿って、スケジュールマネジメントの基本をわかりやすく解説します。
スケジュールマネジメントとは?
スケジュールマネジメントとは、プロジェクトの活動を定義し、それらの順序・所要期間を見積もり、スケジュールを作成・管理する一連のプロセスのことです。
目的は、計画通りにプロジェクトを完了できるようにすることです。
PMBOK第6版では、スケジュールマネジメントは以下の7つのプロセスに分けて整理されています。
スケジュールマネジメントの7つのプロセス(PMBOK第6版)
プロセス | 概要 |
---|---|
1. スケジュール・マネジメントの計画 | スケジュールの作成・管理方法をあらかじめ決めておく |
2. アクティビティの定義 | プロジェクトに必要な作業(アクティビティ)を洗い出す |
3. アクティビティの順序設定 | 各アクティビティの前後関係を整理する |
4. アクティビティ資源の見積り | 各作業に必要な人員や機材などのリソースを見積もる |
5. アクティビティ所要期間の見積り | 各作業にかかる時間を見積もる |
6. スケジュールの作成 | 作業の順序と所要時間をもとに、全体のスケジュールを組み立てる |
7. スケジュールのコントロール | 実績と計画の差異を確認し、必要に応じて調整する |
これらは順番に進めることで、より精度の高いスケジュールを立案し、確実な進捗管理を行うための体系的な手順となっています。
具体的なイメージ:家を建てるプロジェクトの場合
たとえば住宅建設のプロジェクトでは、以下のような流れでスケジュールマネジメントが行われます。
- 作業の洗い出し(アクティビティ定義):地ならし、基礎工事、柱の設置、屋根の施工など
- 順序設定:基礎が終わらないと柱は立てられない、といった依存関係の整理
- 時間の見積り:基礎工事は10日、屋根は5日など
- スケジュール作成:全体の作業を並べて、完了日を予測
- 進捗管理:日々の実績と照らし合わせて、遅延の有無を確認
このように、作業を細かく定義して、計画と実績を管理することで、スムーズなプロジェクト進行が可能になります。
第7版との違い
PMBOK第7版では、これまでの「プロセス中心」から「原則中心」の考え方に変更されました。
スケジュールマネジメントに関しても、個別の手順よりも「目的達成のために柔軟に対応する姿勢」が重視されています。
ただし、実務では今でも第6版のプロセスが広く使われており、試験対策としても第6版の知識が不可欠です。まずは第6版をベースに理解を深め、実務やプロジェクト特性に応じて第7版的なアプローチを取り入れていくのが現実的です。
よく使われるツールと用語
- WBS(Work Breakdown Structure):作業を階層的に分解して整理する図
- ガントチャート:スケジュールを視覚化した横棒グラフ(進捗管理にも活用)
- クリティカルパス:遅れるとプロジェクト全体が遅延する重要な作業の流れ
- EVM(Earned Value Management):コスト・進捗を数値で分析する手法
まとめ
スケジュールマネジメントは、プロジェクトを予定通りに完了させるための基盤となる管理領域です。PMBOK第6版の7つのプロセスを理解し、それぞれの意味と流れを把握しておくことで、実務でも試験でも役立つ知識となります。
特にプロジェクトマネージャ試験やPMPを目指す方は、クリティカルパスやEVMなど、数値的な分析手法にも慣れておくことが重要です。